透明水彩絵具の中にはパレット上で混ざったように見えても紙の上で分離する色があることはご存じだろうか。
これは、水によく混ざる絵具(以下、ステイン系=細かい粒子 )と、粒子が大きく重いため紙に付着する色(以下、グラニュレーション系 = 顆粒化・粒状化) があるからだ。
この二種類の絵の具を混ぜてウエット・イン・ウエットで流し込むと、ステイン系 は水といっしょに浸透して広がっていくが、グラニュレーション系 はガサガサしていて拡がらない。
これは、赤系が ステイン系、青系がグラニュレーション系。
因みにこの場合は、パープルマゼンタとウルトラマリンでやってみた。
今度は青系がステイン系、赤系がグラニュレーション系の場合。
マリンブルーとカドミウムレッドディープ混ぜてみた。
こういう色を混ぜて作ったグレーは、いろいろな色に変化しておもしろい効果が期待できる。
『私が、「陰(影)にはペインズグレーを使ってはいけない」と生徒さんに言っている一つの根拠でもある。』
《見分け方》
■筆洗の底に溜まっている色は、グラニュレーション系。
■水にさっと広がるのはステイン系。
※グラニュレーション効果については拙著『水彩風景 シーン別でわかる 手順百科』に技法・作例を掲載しているのでご参照頂きたい。
グラニュレーション効果についての説明の一部。
作例を少し…
紙の上で絵の具を動かすことで、色の分離が起こり様々な色が出てくる。
ウルトラマリンが多く入った影の部分はグラニュレーションのガサガサがよく出ている。
※グラフィック社より2011年刊行の本の表紙に使用した静物画。
紙の種類によってガサガサの模様が変わるのも面白い。因みにこれはファブリアーノの荒目。上の2点はアルシュの荒目。
20年近く前からこの効果を使って描いてきたが、最近絵の具メーカーがこの部分をフィーチャーした絵の具を出していて、とても人気があるようだ。
※ヒューとかチントは有機系(化学顔料)なのでグラニュレーション効果は出ないようだ。